豊洲市場における土壌汚染対策等に関する「専門家会議」への公開質問状

4月3日、「専門家会議」へ提出した公開質問状の全文を掲載します。


 築地市場の豊洲移転問題は、築地市場を利用する業者や関係者、働く方々はもとより、多くの都民が関心を寄せています。それは豊洲新市場予定地が、世界最大の石炭ガス工場跡地で、2008年にはベンゼンで4万3000倍、シアン化合物で930倍の環境基準を超える高濃度汚染が検出され、多くの都民が「食の安全・安心」に大きな不安をもっているからです。土壌汚染が残っているなら食の安全、安心は確保できない、築地市場は移転すべきでないというのが、多くの都民の共通した思いです。その立場から3月19日の「第5回豊洲市場における土壌汚染対策等に関する専門家会議」での報告について以下の点を公開で質問いたします。4月20日を目途にして文書にてご回答いただけるようお願いします。
 
1、 今回の地下水モニタリング再調査によって第9回モニタリング調査結果が確定値になりました。第9回調査では、ベンゼンが最大で79倍、基準値を超えた地点は35ヵ所、検出されてはいけないシアン化合物は39ヵ所から検出されており、201の調査地点のうち72地点から環境基準を超えた有害物質が検出されています。これによって豊洲予定地の土壌に有害物質が広範囲にわたって残存していることが明確になりました。この残存している土壌汚染の実態を解明することなしに科学的な土壌汚染対策、リスク管理はできないと考えます。
専門家会議において以下の点ついてどう考えているか、回答をもとめます。
① 専門家会議は、第9回調査で基準値超の汚染物質が検出されたのは、地下水管理システムの稼働によって地下水が流動化したことで汚染物質が流出したとしています。第9回モニタリングは11月21日~12月6日に採水したもので、地下水管理システム稼働から1ヵ月程度経過した後の数値でしかありません。残存している土壌汚染の実態をつかむためには、地下水管理システム稼働後のモニタリング調査一回では判断できないのではないでしょうか。実際に2月の専門家会議の再調査では、第9回調査に比べてベンゼン、シアン化合物、ひ素のいずれかで高い値をだした地点が27ヵ所中16ヵ所あり、汚染が広がっています。数年にわたる継続的なモニタリング調査で地下水汚染の数値の変動を検証し、残存している土壌汚染の実態を解明する必要があると考えますが、専門家会議はどのように判断しているのでしょうか。土壌汚染の実態解明のための今後の地下水モニタリング調査の計画について明らかにしてください。
② 「2年間の地下水モニタリング」は、豊洲新市場予定地の汚染土壌が除去できたかどうかを判断すること(形質変更時要届出区域の解除)を目的にしていました。第9回調査で201調査地点のうち72ヵ所から環境基準を超えたベンゼン、シアン化合物などが検出されたことが確定したもとで、再調査27地点だけでなく、広域にわたって土壌調査が必要です。特に基準を超えた地点を中心にしてボーリング調査などで直接土壌を調べ有害物質の残存状況を解明する必要があると考えますが、専門家会議の見解を求めます。

 

2、 第9回モニタリング調査結果をふまえた上で、豊洲予定地の土壌汚染について、以下の点についてどう考えているか、回答をもとめます。
① 第5回専門家会議では「操業由来の土壌汚染はすべて除去した」「残された汚染は自然由来」という報告をしていますが、これは専門家会議が判断したものでしょうか。「操業由来の土壌汚染はすべて除去した」という科学的根拠は何なのか、詳しく具体的に明示を求めます。
② 同専門家会議では、第9回モニタリング調査や再調査で検出された環境基準超えのベンゼン、シアン化合物は、豊洲新市場予定地の地下水の中に残存していたものと結論づけた報告をしていますが、その根拠は何でしょうか。汚染物質が地下水にあって土壌に残存してないとする判断の根拠を説明して下さい。
③ 同専門家会議では、地下水管理システムによる地下水位の現状を、目標のAP1.8mまで次第に低下すると報告しましたが、現状(3月24日時点)では目標に到達したのは21本中1本だけ、それ以外はすべてAP2.2m以上、水位が1m以上高いAP2.8m以上が5本あります。しかも渇水期である1月、2月でも大半が数十cmしか地下水位は低下しておらず、雨量の多い時期になれば再度上昇する可能性が大きいと言わざるをえません。地下水管理システムも現段階において検証が必要だと思いますが、専門家会議の見解を求めます。

 

3、 第5回専門家会議で平田座長の「地上は安全」との発言部分だけがメディアなどで取り上げられています。しかし専門家会議では施設下の地下ピットには「気化した水銀、ベンゼン、シアンを含むガスの地下ピット内への侵入が発生」「1階床面のコンクリートひび割れ等が生じて…侵入・拡散する」ことを「将来想定するリスク」として指摘しており、対策内容が確定してない現状で「地上は安全」などと、どうして言えるのでしょうか。
豊洲予定地の市場施設下の地下ピットは盛り土がされておらず、下部は砕石層がむき出しになっている、あるいは捨てコンしか敷かれてない状況です。土壌汚染対策法では、高濃度の汚染土壌のある土地を「要措置区域」から「解除」する場合、盛り土などによって汚染土壌を封じ込めしなければなりません。砕石層や捨てコンでは封じ込めの効果がないことは、これまでも汚染地下水が地下ピットに流入し、有害物質が気化したことをみても明らかです。盛り土で封じ込められてない土地は豊洲新市場予定・主要施設のほぼ全てであり、汚染土壌の封じ込めがされていない土地を残して「地上は安全」とはどういうことなのか、専門家会議の見解をもとめます。

 

4、 2011年の東日本大震災時に豊洲予定地では、土地の液状化現象による「噴砂」が各所でおきました。今後30年間で70%以上の確率で首都圏直下の巨大地震が予想されるもとで、湾岸地域の埋め立て地では液状化、噴砂は重大な問題です。建物下だけでなく外周部においてひとたび「噴砂」が起きれば、地下に高濃度の有害物質を残存してもとでは、それが噴出、気化し、生鮮食品に多大な影響を与え、市場の存続を揺るがしかねない重大な問題になります。これまで東京都がおこなってきた液状化対策、噴砂対策が適切であったか検証が必要です。豊洲新市場予定地は最悪の軟弱土壌構造の地歴をもつ液状化しやすい場所です。専門家会議は、震度7程度の地震がきたらどうなると考えていますか。また、全国で研究している専門家の英知を結集して液状化対策を検証する必要があると考えますが、専門家会議の見解をもとめます。

 

5、 「食の安全、安心」の確保は中央卸売市場にとって不可欠の条件です。土壌汚染対策法においては、汚染の除去を行わず盛り土などで汚染土壌を封じ込めて土地利用することは可能ですが、生鮮食品を扱う中央卸売市場で高濃度汚染を残したままの土地に移転することは、消費者の安心が得られるものではないと考えます。実際に政府は、閣議決定で「東京都に対して、食の安全性や信頼が確保されるよう科学的見地に基づき万全な対策を講じるとともに、消費者等に対して対策の内容等について十分に説明を行い、その理解を得るように求めている」(2007年11月27日)と質問主意書に回答しています。そういう立場にたって、農水省は最近の国会答弁で「東京都がこの汚染の除去の措置を行わず盛土等のみを行った状態で卸売市場用地として申請することについては想定しえない」(2016年12月12日、参議院消費者問題特別委員会)と述べています。専門家会議は、こうした政府の見解についてどう判断しているのでしょうか。

 

6、 2011年2月23日の都議会で、専門家会議の任務として「無害化された安全な状態」にするために①土壌汚染対策を確実に行う②東京ガス豊洲工場の操業由来の汚染物質をすべて除去、浄化する③地下水の汚染も環境基準以下とすることを決議しています。今回の専門家会議もこの任務を受け継ぐことが求められます。しかし、現実は、再調査結果が、調査した地点29地点のうち25ヵ所から環境基準を超える有害物質を検出、ベンゼンが最大環境基準の100倍、ひ素が同3.6倍、不検出が基準のシアン化合物も13地点で検出されています。
 東京ガス由来の有害物質がまだ多量に残存している状況は、専門家会議の「無害化された安全な状態」にするという任務が果たされていないことを示しています。このような状況のなかで専門家として安全宣言をしても多くの都民は納得しないと思います。専門家会議の見解をもとめます。

 以 上